限定承認とは?
限定承認とは
「相続によって得たプラス財産の限度において、被相続人の債務などのマイナスの財産を相続すること」というものです。
全ての財産を放棄する相続放棄の場合とは異なることにご注意ください。
マイナスの財産とは?
財産にはプラスの財産もあればマイナスの財産もあります。
マイナスの財産には借金や、 ローンの負債などがあります。
さらに未払いの税金や損害賠償金などもマイナスの財産となります。
後になってからマイナスの財産が見つかることもある
いざ、相続をするとなっても、プラスの財産とマイナスの財産と、どちらか多いか
財産を調べてみないとわからない場合が多くあります。
後になってから多額の借金が見つかり、プラスの財産よりマイナスの財産のほうが多い場合もあります。
しかし、「限定承認」をしていれば、相続したプラスの財産より多いマイナスの財産の部分は返さなくてもかまわないのです。
また、結果的にマイナスの財産よりプラスの財産のほうが多かったとしても、財産はそのまま引き継げます。
上記の点から、「限定承認」は有効な制度といえます。
限定承認のメリットとは?
「限定承認」をしていれば、相続したプラスの財産より多いマイナスの財産の部分は返さなくてよい制度です。
親が会社を経営していて、借金があった。
親が金融機関からお金を借りていて、返済が終わっていない・・・など借金がある場合でも相続が免除となるので、便利な制度です。
限定承認は家庭裁判所への申立てが複雑なほか、準確定申告や譲渡所得税の申告が必要になる場合が大半となりますので、税理士と連携して申立てすることが必須となります。
弁護士だから、司法書士だからといって任せてしまうと、大変な金額の税金が請求される場合もありますので、必ず専門事務所に相談しましょう。
相続人が多い場合・・・
「限定承認」をする場合、ひとつ注意が必要です。それは、相続人が多い時です。
マイナス財産は引き継ぎたいと思う人がほとんどいません
しかし、会社やお店を経営している場合、マイナスの財産をどうしても引き継がないと「 継続ができない・・・」という状況があります。
マイナスの財産を引き継ぐために新しく借り入れをしなければいけない・・・なんてこともあります。
会社を継承する場合よくある話なので、親が自営業の場合は注意が必要です
お店や会社を経営してる場合、経営者はマイナスの財産があることを家族などに伝えておく必要があります。
迷惑がかかるから・・・と思い、気を使って隠してしまうと 相続する時に家族に迷惑をかけることになります。
どこに申告したらいいのか?
3ヶ月以内に家庭裁判所に申告する
限定承認は、家庭裁判でおこないます。
「限定承認」を選択する場合、相続放棄と同じように、相続の開始があったことを知った日から 3ヶ月以内に被相続人の住所地の家庭裁判所に申告する必要があります。
「限定承認」のメリットは、借金や債務を相続しなくて済むことです。親に借金があっても、引き継がなくて大丈夫な制度です。
相続するかについては、決断するまでに期限が短いので、早めに家族の財産を整理し、把握しておく必要があります。
「相続放棄」と同じで申し出がないと認めてもらえません。
限定承認の注意点とは?
相続人全員の同意が必要
限定承認は「相続人全員が共同で」行わなければなりません。相続人のうち一人でも「イヤだ」といってゴネてしまえば他の相続人も限定承認ができなくなります。
兄弟で仲が悪い場合、揉める可能性がありますので、注意が必要となります。
限定承認は、借金を引き継がなくても良いというメリットもありますが、手続きがやや複雑で、家族間の調節などが必要なので、デメリットもあると言えます。
法定相続人のひとりが行方不明であれば、「不在者の財産管理人」という役割の人を家庭裁判所に選んでもらった上でその人と一緒に限定承認の手続きをします。
相続人のうちの誰かが、「相続放棄」をしていても、家族など他の相続人が同意すれば、限定承認の申告をすることができます。
限定承認のデメリットとは?
とにかくて手続きが面倒
限定承認は手続きがとても面倒です。限定承認をする場合,「相続財産目録」を作成しておく必要があります。申述書と一緒に提出することになります。
申述をすると、家庭裁判所で「相続財産管理人」という人が選ばれます。
その人が遺産の内容を調査していきます。
「債権者」や「利害関係人」のために官報公告を出し、必要な支払をします。そして、最終的に残った金額を相続人に渡します。
これを読んでいるだけでも、面倒だな・・・ と思う人も多いかとおもいます。
手続きには半年以上がかかることもあります。とにかく時間がかかります。
限定承認の申述においては,手数料と郵便切手も必要です。手数料は収入印紙で支払います。金額は1人800円です。あらかじめ用意しておきましょう。
限定承認の申述書を提出した後に、裁判所から問い合わせや資料の追加を求められることがあります。
さらに、ここで手続きが終わりではなくその後の「公告」・「弁済」といった手続きがあります。
「公告」・「弁済」終わって初めて限定承認の手続きが完了します。
慣れていない場合、手続きにかなり時間がかかります・・・
相続放棄の場合は、簡単に手続きが終わりますが、限定承認はかなり時間と手間がかかります。
限定承認のまとめ
限定承認は、便利な制度なのですが、かなり時間と手間がかかります。限定承認は、その煩雑さから、利用件数が少ないのが現実です。
死んだ人の財産や負債について3ヶ月の期限内に調査して、申告をしなければいけないので、かなりハードルが高いと言えます。限定承認をしたいと思っている場合は、早めに相続人や財産の調査をしておくことをオススメします。